妊娠36週から妊娠10ヶ月に入り、そろそろお産の時期が近づいてきます。
お産は妊娠39〜40週が最も多いのですが、37〜41週まで広く分布しています。
分娩予定日とはひとつの目安となる日で、分娩が予定されている日というほどではありません。
陣痛はいつ始まるかわかりません。
子宮口の開きぐあい、子宮口の短縮の程度、子宮口のやわらかさ、胎児の頭の下降度、
子宮口が前にむいてきているかなど、これらの内診所見は、まもなく陣痛が発来するかどうかの目安となります。
1.陣痛の予兆、兆候
胎児の位置が下がってきた感じがしたり、そのためにさらにおしっこが近くなったり、
以前より子宮収縮がひんぱんに起こるようになったり、胎児が動く位置が変わったり、
その動き方が鈍い感じになったりとお産が近づいてきた人はさまざまな兆候があらわれます。
お産のはじまり方にはいろいろなパターンがありますが、その多くは、いつもより頻繁に強くおなかが張り(子宮収縮)、
それがさらに強くなって周期的な痛みとして感じられるようになる、というものです。
陣痛とは「10分以内で繰り返す、あるいは1時間に6回以上の(痛みを伴う)規則的な子宮収縮」とされています。
こうなった時点を陣痛の開始とします。
夜中には子宮収縮が起こりやすく、陣痛が始まったかと周期をみているうちに弱まってしまうという経験をする人が大勢います。
いったんは陣痛の定義にあてはまるけれど、結局治ってしまうものを前駆陣痛と呼びます。
テレビドラマでよく見かける陣痛発来の場面は、突然強い陣痛発作が始まるというものですが、そのパターンの人は少数派です。
胎児の下降については妊婦自身で実感できる場合があります。
胎児が下降してくると、子宮のいちばん上の子宮底と呼ばれる部位が下がるので、
母体のみぞおちの部分が空いて圧迫がとれ、胃が楽になったように感じたりします。
2.産徴(おしるし)
陣痛発来の前には産徴(おしるし)と呼ばれる粘液の混ざった少量の赤〜褐色の出血がみられることがあります。
子宮口が開き始め、胎児の入っている卵膜に包まれた袋が子宮口から少しずつはがれて、少量出血するものです。
必ずおしるしがみられた後に陣痛がくるわけではなくて、おしるし無しに陣痛が始まることもあります。
おしるしがらみられてから数日後に陣痛が発来することもあります。
おしるしがあったというだけでは心配ありませんが、おしるしだと思った出血が、
月経の多い日より、多かったり流れてくるようなら、異常に多い可能性があります。
前置胎盤や低位胎盤、胎盤辺縁静脈洞からの出血、子宮の持続的な痛みを伴うなら、
胎盤早期剥離などの胎盤に関した異常の可能性があるので病院に連絡して下さい。
3.陣痛が始まる前に起こる破水
胎児・羊水の入っている袋が破れ、羊水が子宮口から流れ出るようになることを破水と呼び、
多くは分娩時に赤ちゃんの頭が外に出てくる直前に起こります。
陣痛が始まる前に破水が起こることを前期破水といいます。
約3割の妊婦に前期破水が起こり、分娩のきっかけになります。
破水すると半日くらいのあいだに約半数の人に自然に陣痛が発来します。
《注意点》破水すると子宮のなかに細菌が入り感染が起こる可能性が出てきます。
破水かなと思ったら病院に連絡しましょう。
4.分娩第1期
陣痛発来から子宮口が全開大(直径約10㎝)するまでをいいます。
つらくて長い時間かもしれません。
最初は5〜10分周期の陣痛発作の痛みも、やがて2〜3分周期のかなり強いものになってきます。
陣痛発作時には強い子宮収縮により胎児は子宮口の方へ押され、筒状だった子宮口は短縮し、開大してきます。
子宮口が5㎝を超えるころから陣痛も強くなり、全開大までは開く速さが増していきますので、
5㎝まできたら、もう半分以上まで進んだと自分を励ましましょう。
5.分娩第2期
さらに胎児の頭が下降し、分娩が進行します。
陣痛発作時には思わず息を止めて、いきみたくなったりしてきます。
この時期には、助産師のリードにあわせていきんで、陣痛の力に母体の腹圧を加え、娩出の力とします。
ここまでくると陣痛にただ耐えるのではなく、陣痛がきたら思い切りいきんだり力を入れたりできるので、
多くの人が気分的にも楽になったといいます。
陣痛発作のたびに赤ちゃんの頭の先端が外からも見えるようになってきます(排臨)。
破水していなかった場合、この頃に破水(適時破水)することが多く、膜を破って破水させる(破膜)こともあります。
そして陣痛発作の合間にも頭は引っ込まなくなります(発露)。
その後何回かの陣痛発作により児頭が娩出されます。
6.分娩第3期
後陣痛と呼ばれるかるい痛みを伴う子宮収縮により、胎盤は通常自然に押し出されてきます。
胎盤娩出後には産道の裂傷や会陰切開の傷があれば縫合します。
この時期は、子宮収縮が不良となって出血量が増す可能性がある時期ですので
胎盤娩出後の2時間を分娩第4期と呼ぶことがあり、出血量に注意します。
陣痛の特徴は、繰り返し強い子宮収縮(陣痛発作)がおこり、発作のあいだは子宮収縮がおさまることです。
陣痛発作のあいだ、新たな血液は子宮に入りにくくなります。
このあいだの胎児への酸素の供給は胎盤内に蓄えらるた分ですので限りがあります。
陣痛発作が始まると再び酸素の豊富な血液が子宮に入ってきます。
陣痛が持続的ではなく、休みが入ることは、母体にとってもらくであるだけでなく、胎児にとっても重要なことです。