胎児の生存が期待できる妊娠22週から36週までの間に分娩が起きることを早産といいます。
全妊娠の6%程度を占めています。
早産はまだ自分の力では生きられず、特別な治療や保護が必要な未熟児、低出生体重児の出生を招くことになります。
今回は早産についての原因とリスクと予防法をご紹介します。
1.切迫早産の症状
切迫早産は以下のような症状が見られます。
①子宮収縮の増加、数分から十数分ごとの規則的な子宮収縮。
②子宮出血。
③子宮頸管の成熟.子宮口の開大、頸管の短縮、頸管の軟化。
④破水を伴う場合もある。
2.早産に至る原因
原因はわからないことも多いのですが、膣・子宮頸部の感染症が子宮内に及んで胎児側の絨毛膜や
羊膜に炎症が及び、それが子宮収縮をおこしている場合が多いと考えられています。
子宮収縮の増加、数分から十数分ごとの規則的な子宮収縮は危険です。
3.妊娠34週未満で出生した場合
胎児は呼吸機能が未熟なために、新生児呼吸窮迫症候群を起こす危険があります。
胎児の肺成熟を促し、少しでも状態を良好とするために出生前に
母体に副腎皮質ステロイド剤を投与することがあります。
4.早産の治療
母体・胎児の状態を評価し、妊娠継続が可能であるかどうかを判断することが重要です。
妊娠継続出来ない場合は、自然な分娩進行を見守るか、分娩を促進、
あるいは帝王切開により出産を行うことになります。
妊娠継続可能と判断された場合の治療・安静・感染対策(抗生物質製剤投与など)・
子宮収縮抑制薬投与(リトドリン、硫酸マグネシウムなど)。
・頸管無力症に対しては頸管縫縮術。
このような治療を行う際には、母体の状態を慎重に評価しながら妊娠継続を図ることが重要です。
5.破水かな?というとき
破水のときに流れ出る用水の量はさまざまで、少ないときは病院で検査してみないとわからないこともあります。
水っぽいおりものや、尿もれと間違いやすいものですが、破水の場合は一度だけでなく、
姿勢を変えたときなどに繰り返して出てくることが多いです。
はっきりしないときは病院へ連絡して相談しましょう。
原因早産の時期の破水は、産道感染やそれに続発した子宮内感染、卵膜や胎盤の感染などによる炎症のために
卵膜が弱くなることが原因であることが多いと考えられています。
治療胎児が未熟な時期には母体および胎児の状態が許すかぎり、妊娠期間を延長するように努力します。
そのためには感染の防止と陣痛の抑制が重要です。
感染の進行、胎児の状態悪化などが認められれば分娩の方向で管理することになります。
解説前期破水の場合、ほとんどの例では破水後、自然陣痛が始まります。
ところが、早産の時期、すなわち胎児が子宮外で自立して生存する能力を
獲得する以前に破水してしまうことがあります。
これが早産の重大な原因のひとつです。
6.妊娠中毒症の兆候がある
高血圧、たんぱく尿、むくみが3代症状ですが、高血圧、たんぱく尿が重要です。
胎児の発育が不良となりやすく、早期から発症すると帝王切開による早産とせざるを得ないこともあります。
6〜14%の妊娠にみられ、妊娠後期の合併症としてもっとも多く、また母児の経過を大きく左右する母子保健を考えるうえで、
もっとも重要かつ深刻な疾患です。
症状妊娠中毒症では母体および胎児・胎盤に多彩な変化が起こります。
母体では、心循環系の異常と腎機能の低下、進行すれば、循環不全のために中枢神経系、肝臓、
血液系を含む全身の臓器障害が起きてしまうこともあります。
また胎児では、胎盤機能の低下のために慢性の低酸素状態におかれることになります。
このため胎児の発育は障害されます。
原因妊娠という負荷に対して母体が適応することができなくなって、
母体が身体上のバランスを保つことができなくなった状態と考えられています。
治療妊娠中毒症は発症してしまうと妊娠が終了しないかぎり完全に治るということはありません。
中毒症の状態が長く続くと、特に腎機能が低下して分娩後も回復できなくなる場合があります。
このため母体にとっては、重症の妊娠中毒症では早期に妊娠を中断し分娩とすることが望ましいことになります。
7.多児妊娠(双子以上)である
多児妊娠では切迫早産になりやすく、妊娠中毒症にもなりやすいので注意が必要です。
胎児間の発育差が問題になることや骨盤位も多くなります。
双胎妊娠の場合、平均出産週数は37週ころで、単胎の40週ころと比べて約3週間妊娠期間が短いのが現状です。
妊娠37週未満は早産、ということになりますから、双胎妊娠の約半分は早産、ということになります。
双胎妊娠では妊娠30週を越えると切迫早産の症状を訴える危険が高まります。
早産を減少させるためには、この時期の少し前から安静を保ち、母体への負担を少なくすることが重要です。
分娩方法は母児の状態やその時期によってさまざまですが、帝王切開が必要となることが多いのが現実です。
8.大きな子宮筋腫がある
小さな子宮筋腫は多くの人にみられ、通常問題となることはありません。
大きな筋腫は妊娠中に変性(血行障害などによる内部組織の破壊)を起こし、
痛み、発熱、切迫早産などを起こすことがあります。
部位によっては筋腫が産道の通過障害となることがあり、帝王切開が必要なことがあります。
治療を行なっても早産が進行する場合は合併している異常、原因となっている異常、
胎児の状態を検討し、適切な分娩方法を選択します。