妊娠による糖尿病になる原因と予防、治療方法について

妊娠糖尿病とは、妊娠前は糖尿病ではなかった方が、妊娠して初めてかかる糖代謝異常です。

妊娠前に糖尿病と診断されていた方や、妊娠中に「明らかな糖尿病」と診断された方は含まれません。

近年診断基準が変わり、今では妊婦さんの10人に1人がかかるとも言われています。

1.妊娠糖尿病の影響

妊娠中の病気ですのでまず気になるのが胎児、そして母体への影響です。

母体への影響としては、「妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)」、「羊水過多」、「肩甲難産」、

「帝王切開」、「胎盤早期剥離」、「腎症」、「出産後も糖尿病になる可能性が高くなる」などが挙げられます。

胎児への影響としては、「流産」、「巨大児」、「心臓の肥大」、「低血糖」、「胎児死亡」、

「多血症」、「奇形」、「黄疸」、「電解質異常」などが挙げられます。

2.妊娠糖尿病の原因

妊娠糖尿病になってしまう原因は、妊娠するとホルモンの分泌が変化するからです。

妊娠時には、血糖値を下げる働きをするインスリンの働きを抑えるホルモン(プロゲステロンなど)が

胎盤から分泌されるようになります。

そのためインスリンが効きにくい状態になり、血糖値が高くなりやすくなります。

正常な妊婦さんの場合は、血糖値の上昇を抑えるため妊娠前よりも多くのインスリンを分泌するようになります。

しかし、インスリンを大量に分泌できない体質の妊婦さんの場合には血糖値が上がってしまうことになります。

3.妊娠糖尿病にかかりやすい人

すべての妊婦さんに妊娠糖尿病にかかる可能性はありますが、特に気を付けてもらいたい人がいます。

妊娠糖尿病にかかるリスクが高い人は、「家族に糖尿病の人がいる」、「肥満」、「高齢出産」、

「羊水過多」、「巨大児の出産経験がある」、「妊娠してから急に体重が増えた」、「妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)」、

「尿糖陽性が強かった、あるいは2回以上続けて尿糖が陽性だった」、「原因不明の流産、早産の経験がある」などに該当する方です。

しかし、肥満とありますが、痩せている方でも妊娠糖尿病になる人はいますので、一概には言えません。

4.妊娠糖尿病の診断

妊婦健診では、妊娠初期にグルコース(血糖)検査を行い、血糖値を測ります。

血糖値が高かった場合には、ブドウ糖負荷試験をして診断します。

グルコース(血糖)検査の場合、随時血糖値が100mg/dl以上の場合は血糖値が高いとされています。

ブドウ糖負荷試験では実際にブドウ糖を飲み、その後時間の経過とともに血糖値がどう変化するか調べます。

妊娠初期で異常がなかった妊婦さんも、妊娠中期、妊娠後期となるにつれインスリンが効きにくくなるので、

妊婦健診では妊娠中期にもう一度グルコース(血糖)検査を受けるようになっています。

5.妊娠糖尿病の予防①

妊娠糖尿病にならないためには、まず「食事療法」が挙げられます。

妊娠初期、中期、後期それぞれの一日の摂取量をチェックし、バランスのよい食事を心掛けましょう。

血糖値の上昇の原因となる糖質を控えてください。

お菓子、ジュース、ファーストフードなどは多くの糖質を含むので極力避けた方がいいです。

お米やパンなどの炭水化物も糖として吸収されますので、多量に食べることは止めてください。

どうしてもお米が大好きだという方は、白米を玄米にするだけでも効果があります。

また、気を付けてほしいのが果物です。

糖分が高いものが多いので、野菜がわりに食べてはいけません。

食物繊維は食後の血糖値の上昇を緩やかにする効果があるのでぜひとりましょう。

同じ内容の食事を3回で食べるよりも、6回に分けて食べるといった分食もオススメです。

6.妊娠糖尿病の予防②

もう1つ予防として挙げられるのが「運動療法」です。

自宅でストレッチをするのもいいですし、最近では産院などでマタニティーヨガ、

マタニティービクスなどを行っているところもあります。

また、マタニティースイミングができるスポーツクラブもあります。

産院の先生と相談しながら、時期にあった適度な運動を行いましょう。

ただし、運動中にお腹が張ってきたときは、無理をせず横になるなど楽な姿勢ですぐに休むようにしてください。

7.妊娠糖尿病の治療

妊娠糖尿病になってしまった場合、まずは食事療法と運動療法から始めます。

それでも改善されないときには薬を飲んだり、インスリンの注射を打ったりすることもあります。

8.産後の注意点

妊娠糖尿病になった方は、出産後再度ブドウ糖負荷試験を受け、治ったかどうか診断してもらう必要があります。

治っていた人も、かからなかった人と比べて高い確率で将来糖尿病になりますので、継続的に血糖値を測定することが大切です。

産後に赤ちゃんに母乳を飲ませると、赤ちゃんもお母さんも将来糖尿病になりづらくなるとされているので、

積極的に母乳を飲ませましょう。

妊娠糖尿病はほとんど自覚症状がないので、妊婦健診で検査を行って初めて分かることが多いです。

妊娠糖尿病だけでなく、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、切迫早産などの早期発見のためにも、

必ず妊婦健診を受けるようにしましょう。

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